スペクトラム・アナライザを遂に購入しました。 購入前後で色々付随することをしたので、まとめます。
購入したスペクトラム・アナライザ
- Hewlett-Packard(→ Agilent Technologies → 現Keysight Technologies*1)の8650E
- TG(Tracking Generator)オプション付
- 購入はヤフオク(計測器というものは、量を絶対的に正しく計測できてこそ意味があるとは思うのですが、如何せん高いのと、現状大雑把に把握できれば良いかなと思って中古です)
購入の諸々
そもそも要る?
- オーディオ帯だけなら、PCのオーディオ入出力と、フリーソフト「WaveGene」「WaveSpectra」の組み合わせはどうか
- SDR-likeなスペアナはどうか(そこそこ見たいものは見れるし、比較的安価。古くからのGigaSt(生産中止)、おじさん工房のAPB-1とか、OSA103 miniとか)
- 回し者ではないですが、KeySightの「InfiniiVision 1000 Xシリーズ オシロスコープ」(「G」モデルのみ)なら、周波数応答アナライザが付いています。『1000 Xシリーズの周波数応答アナライザ機能は、学生がパッシブRLC回路やアクティブオペアンプの利得/位相性能を理解する上で非常に役立つツールです』とあります。欲しいのは正にこれではないですか?私は購入後に知って結構後悔しました。
- 新品で良いのではないか(最近は新興メーカーの安価なスペアナがある:RIGOL DSA815-TG、OWON XSA1015-TGなど)
- スペアナでは位相特性は計測できないようです。ネットワークアナライザが欲しいのではありませんか
探すときに重要視した点
- 安いこと
言わずもがな
- TGオプションが付いていること
これがないと周波数特性(|H(jω)|)がうまく計測できない。 もっとも、自分の信号発生器ではホワイトノイズ(パワースペクトル密度が周波数に依らず一定)を発生できるので、それを被測定回路に入力することで測定できなくはない*2。 ただ、60MHzが上限という問題があり、VHF帯の受信機の回路特性を知りたいなとちょっと思って、TG付きにした。
使ってみても、やっぱりあると便利だと思う。主に下記の点で。
- (再掲)スイープ可能な周波数範囲が段違いに広い
- CAL THRU校正できる(被測定回路抜きで特性を測り、そこに含まれるケーブルなどの周波数特性を含めないようにできる。さもないと、自分で引き算する必要がある)
TGの出力レベルを基準としてノーマライズできる(基本的には、被測定回路の特性が+/-何dBかを見たいので、基準レベルを設定できると視認しやすい)
測定周波数の下限が可聴周波数の下限程度(オーディオ帯)であること
スペアナだとあまりないが、9kHz~とか、ネットワークアナライザだと10MHz~とかがある。 一方で、オーディオ系回路も測定したいと思っていて、下限には気をつけた。
ヤフオク
(ebayという選択肢もあります)
探す時に気をつけた点
・「TG付」には慎重になる
・「TG」「トラッキング・ジェネレータ」でフィルターしない
書いていない時もある。また、オプション番号のみを「OPT 002」と書く人もいて、フィルターが難しい。
・「TG付」と書いてあっても、ちゃんとTG付でのみ存在するTG出力コネクタがあるか写真で確かめる
eBayも見ていたんですが、1つこういうのがありました
・お得そうに見えても、Calibrationやその他エラーが出ているものは諦める
動かないのは困る
・通電時のモニタの写真がないものも諦める
同上。せめて、表示に問題がない(エラーの表示がない)こと、ノイズフロアが変に高くないことくらいは確かめたい。
・入出力インピーダンスが75Ωのものも諦める
一般的には50Ω…(50Ω ⇔ 75Ωのインピーダンス変換器を、TG出力後とRF入力前に必要とするが、挿入損失ガーとかめんどくさそう)
出品状況
その上で、スペアナ全体の出品数に対し、TG付の出品数は少ないので、意外と長期戦になる覚悟をする。 比較的多く出品されているのは以下だと思う。
- HP / Agilent(8650Eシリーズと、Agilent ESAモデルがある。後者のTG付きはeBayでだけ見かけた。8650Eシリーズ以前は安めだが輪にかけて巨大)
- ADVANTEST(ほぼTG付。ただし動作品30万が大半。未確認・NC・NRで10万弱というのはあまりない(ブラウン管モデルとか、古いやつくらいか?))
- アンリツ(出品数少なめ)
購入後に確認した点
- 基本的なボタンの動作チェック:Freq, Amplitude, Spanの他、ATT, 結合, などなど。校正信号を使った
- スペアナそのもののチェック:SG・SSGで色々信号を入力し、問題ないことを確認
- TGの出力チェック:一旦オシロでざっと確認した。その上で、スペアナに繋いだ
購入時に気付かなかったこと
・TGの下限(300kHz) ≠ 測定周波数の下限(30Hz)
つまりオーディオ帯は無理。まあ、ええねん…
・アクセサリが高い
盲点だった。後述
合わせて買ったもの
意外と多かった。出費も馬鹿にならなかった。 商品名は会社ごとに異なってしまうので、ちょっとゆれを考慮した検索が必要。
通番 | 商品 | 製造元 | 型番 | 購入先 | コメント |
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1 | DCブロッカ / DCカッター | テクシオ・テクノロジー | ADB-002 | モノタロウ | スペアナは(特にDCの)過大入力に弱いらしい。もちろんスペアナ自体にこの機能があるが、OFFにも出来るので。本当は多摩川電子のCD1001が\5,500で安いが、売り切れていた |
2 | アッテネータ(10dB) | トーコネ | BA-PJ-10 | モノタロウ | スペアナを壊したくない一心で購入…。あと、高ゲインアンプを測定する際、TG側に必要になるかも? |
3 | アッテネータ(20dB) | トーコネ | BA-PJ-20 | モノタロウ | 同上 |
4 | 抵抗整合器 | スタック電子 | PD003 | モノタロウ | 直接は関係ないが、50Ω出力をハイ・インピーダンスのオシロに入力できるようにする変換器。中身は抵抗が1つと単純 |
5 | N型コネクタからの変換コネクタ | - | - | 秋月電子通商 | スペアナがN型コネクタだったので変換プラグが必要だった |
6 | BNCケーブル 0.5m | - | - | 秋月電子通商 | 測定器と被測定回路を結ぶのに必要 |
7 | BNCコネクタ | - | - | 秋月電子通商 | 今まであまり測定を考えずに作っていたため、必要に |
8 | 片側BNCミノムシ クリップ | CONTEC | BNC-W60 | モノタロウ | 良し悪しに議論がありそうだし、そもそも自作もできそうだが |
9 | BNC→3.5mmモノラル変換アダプタ | COMON | BNC-35M(P) | フタバヤ楽天市場店 | - |
他に、買っていないが、以下があると便利だと思う。
- RFパワー・リミッタ。例えば多摩川電子のUZA002
- 高インピーダンス系 → 50Ωの変換アダプタ。広帯域オペアンプのボルテージ・フォロワで良い気もする。一応メーカーのだとHPの41802Aという製品がある
その他、スペアナ入門用の本を購入した。
スペクトラム・アナライザによる高周波測定, 高橋 朋仁, CQ出版, 2010.
リンク
- 8650E 製品ページ:8560E ポータブル・スペクトラム・アナライザ、30 Hz~2.9 GHz [販売・修理サポート終了製品] | Keysight。まずはここ
- ユーザーズ・マニュアル:http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/08560-90117.pdf。TGを使うときのCAL THRUなどが参考になる
- VBWについて:測定のツボ スペクトラムアナライザのVBWとは?RBWとの関係性は?