働きたくない

5000兆円欲しい

アンアン(巻線比1:4)を作成した

目次

動機

この間張ったロングワイヤーアンテナのインピーダンスが1kΩ程度であり、同軸ケーブルとのインピーダンス非整合を解消するため。

虚部(約50pF)の方は値が小さいため、しばらく無視します。

設計

身も蓋もないことを言えば、Mini-Circuitのインピーダンス変換トランスを使用したほうが良い(特性も良さそう)気がしますが、自作しました。

巻線比

まず、巻線比を決めます。巻線比  n_1 : n_2 だとインピーダンス比は  n_1^2 : n_2^2 になるので、巻線比1:4ならインピーダンス比1:16(50Ωなら800Ω)、巻線比1:5ならインピーダンス比1:25(50Ωなら1250Ω)。

ここでは、次のような理由から1:4にしました。

  • 短波帯でのアンテナの \text{Re}(Z) は概ね< 1kΩ
  • 5本を撚り合わせて巻くのは手間
インダクタンス

LTSpiceでテキトーに試して、それっぽい特性になったところで決めました。

シミュレーションの際に結合係数 M を指定する必要がありますが、こればかりはどのような水準となるのか全然想像がつかなかったので、M = 0.99 としています。

だいたい100kHz~10MHzで挿入損失が小さい特性となりました。

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LTSpiceによるシミュレーション。(左)回路図(右)周波数特性

次に、これをどう実現するかですが(結合係数は置いておいて)、ここでは、自分でフェライト・コアを使って作ることにしました。 良く使われるフェライト・コアにアミドン社のFTシリーズがありますが、今回これを使います。

コア材は、#61の作例が多いかと思いますが、今回は比較的低い周波数に興味があったこと、その分インダクタンスも大きな値が必要なことから、#43を使いました(推薦周波数0.01 - 1MHz)。

また、巻数が比較的多くなると思われたため、直径の大きなコア(FT-114-43)を使用しています。

線材はΦ0.29mm UEW線(手元にあったのがこれだけだった)。

FT-114-43に巻く場合の巻数 n は、インダクタンス L より、n = 1000 \times \sqrt{\frac{L}{AL_{1000}}} で求めています。この式中のAL値 [AL_{1000}] は、FT-114-43では603です。

150μHを得るためには、15.77… ≒ 16回巻く必要があります。

製作

必要な部品

回路図としては至極単純なのですが、実際にケースに収めて完成形まで持っていこうとすると、そこそこ部品が必要でした。

トランス周り

部品名 メーカー・型番 個数 値段(税抜) 購入場所 備考
FT-114-43 Amidon 1 @231(税込) 千石電商 外国の通販を使用するととても安い
UEW Φ0.29mm 協和ハーモネット株式会社 2m @190(税込) 秋月電子通商
結束バンド - 2本 - 在庫を使用

端子周り

部品名 メーカー・型番 個数 値段(税抜) 購入場所 備考
BNCコネクタ(J) 丸座非絶縁 @120(税込) 秋月電子通商
ステンレス 防水ワッシャー M6 タキゲン C-1029-WP-M6 @43 MonotaRO
ボルト・スプリングワッシャー・ナット M6 - 2 - 近所のホームセンター 長くてもあまり困らない
蝶ナット M6 - 2 - 近所のホームセンター
裸圧着端子 M6 - 2 - 近所のホームセンター 丸形

ケース関連

部品名 メーカー・型番 個数 値段(税抜) 購入場所 備考
ケース タカチ BCAP091207T @879 MonotaRO
ケース用プラスチック取付ベース タカチ BMP0811P @149 MonotaRO
ケース用ルーフ タカチ BRF-90G @499 MonotaRO
ケース用止め金具 タカチ SSK-S1 @499 MonotaRO
パイプ固定用バンド タカチ PKB-10PM @620 MonotaRO

ケース本体よりもアクセサリの総額のほうが高い…。

トランスを巻く

まず、トランスを巻いていきます。

  1. 最初に、UEW線1本のみを軽く巻きつけ、必要な長さを把握しておきます(長さは余裕を持って設定し、後で切り詰めたほうが良い)
  2. 次に、その長さでUEW線を4本切り、撚り合わせます(2倍の長さ×2本を用意し、撚り合わせてから半分に切ったほうが撚り合わせるのは楽)
  3. これをコアに巻きつけていきます。なるべく等間隔で、コア材の角で被覆を傷つけないように…
  4. 最後に、線の端同士を必要に応じてはんだ付けし、熱収縮チューブで上から保護します

言うだけなら簡単なのですが、2.の撚り合わせるところと、4.でどれとどれを結ぶか把握するところが、思ったより面倒でした。

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トロイダル・コアへの線材の巻きつけ。(左)1.(中)3.(右)4.

ケースに入れる

ここは特筆する点はありません。

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(左)用意したケースとボルト類(右)ケースに入れたあと

測定

負荷として1kΩの抵抗を付けておき、nanoVNAを使用して、入力側から見たインピーダンス(50Ωになるか)とSWRを測定しました。

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nanoVNAによる測定風景。(左)~2MHz(右)~50MHz

周波数 Re(Z) Im(Z) SWR
50 13.6 80.7uH 4.67
108.5 35.4 44.6uH 2.18
303.5 57.6 7.82uH 1.36
401 59.8 3.91uH 1.28
498.5 60.7 1.95uH 1.25
549.5 58.5 846nH 1.18
557 61 1.22uH 1.23
1005.5 60.4 30.9nF 1.23
1668.5 56.9 7.13nF 1.32
2000 54.6 4.88nF 1.38
3546.5 44.8 2.18nF 1.55
7043 27.1 996pF 2.33
15035 9.16 1.23nF 5.62
30020 4.63 73.7nH 11.64
50000 6.76 115nH 11.35

シミュレーションでは10MHzくらいまでフラットのはずでしたが、実際は2MHzあたりから悪化していきます。コア材の推薦使用周波数は1MHzまでとなっていますが、その影響でしょうか。

実際の使用

正直ちゃんと見ていないので分からないのですが、耳で聞く限りだとあまり変わった気はしませんでした。 信号が強くなる気がしていましたが。

参考