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漁業無線について

中短波(除く27~28MHz, 40MHz帯)の、いわゆる漁業無線についてです。 最近少し調べたので、備忘としてまとめておきます。

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受信している時の画像

より広く海上通信について

総務省のページが詳しいです。https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/system/satellit/marine/index.htm

現状としては、一般社団法人 全国漁業無線協会の会長挨拶が個人的には簡潔でわかりやすかったです。

しかし、近年に入り、遠洋漁場からの締め出し、インマルサットをはじめとする衛星船舶電話の発達 、GMDSS(海上における遭難及び安全に関する世界的な制度 )の実施 、さらには沿岸漁船における携帯電話の普及により、漁業無線を取り巻く環境は、ますます厳しさを増すことが予想されます。
当協会としても、デジタル通信技術による文字や画像等のデータ通信を積極的に導入する等、従来の漁業無線の枠を超え、新時代に即した漁業無線の発展 、普及に努めて参りたいと考えております。

受信するには

放送内容

漁業無線では、陸(海岸局)と船(船舶局)との間でやり取りをしています。 船舶局は沢山ありますが、中短波帯の海岸局は全国で30前後だったと思います。 海岸局からは、ラジオ放送と違い、常時何か放送しているわけではありません。代わりに、下記のような放送をしています。

タイプ 内容 仔細 実施局 難易度
電話(J3E) 定時放送 決まった時間に天気、波、潮流、航行警報、魚市場動向の情報を放送。 豊浜以外は行っていると思う ほぼ全て
電話(J3E) 一括?呼び出し 決まった時間に多数の船に向かって「〇〇丸何かありますか」という呼び掛けを順に行う 一部?
電話(J3E) 待受 船舶からの通信を待っている時間帯です。これを聞こうとするとこちらも待つ必要があること、陸→船と船→陸では周波数が違うことが大半ですが船→陸の周波数がよく分からないことから、比較的難易度が高いと思います。その他、大半の船→陸の通信は暗号表(例:静岡県漁業無線局)を使っており聞いてもよく分からないです(唯一、船舶の現在位置(座標)読み上げは、調べるとこんな遠くまで行くもんなんだ…となったりして結構面白いです)。 ほぼ全て
電信(A1A) 定時放送 一局(静岡県)しか聞いたことがありません。実施規模も不明。よく分かりません。 不明(ごく一部?)
電信(A1A) 一括?呼び出し これもよくわからないのですが、定時放送よりは実施局数が多いと思います。ただ、一隻毎呼び出しではなくQRU(そちらは,こちらへ伝送するものがありますか)での呼び掛けで、放送する時間が短いイメージ。 一部
電信(A1A) 待受 あるとは思いますが、聞いたことがありません…。 不明

ちなみに、船→陸の通信に関して、(沖合)QRYという制度があります。

http://megurokai-h.jugem.jp/?eid=105

多数の漁船がなるべく多くの情報を送受したいとする余り、各海岸局別の割り当て時間を逸脱することも多々あって、漁業無線戦国時代と称されることもあった。QRY制度はこれを合理的に解決するため、あらかじめ決めた順序に従って情報を送る制度で、このため短時間で多数の情報の伝達が可能となったのである。

受信のコツ

以上より、まずは定時放送を聞くのが簡単と思います。

ただし、受信には時間や周波数が分かっていることが望ましいですが、基本的にはこれは公開されていません。ただし、一部海岸局は公開しているので、まずはそれを確認すると良いでしょう(下の方にまとめています)。

漁業関係者ならば、そもそも無線の組合に加入すれば教えてくれるでしょうし、そうでなくても一般社団法人全国漁業無線協会発行の「漁業無線全国通信時間表」で分かる(一般人への販売はしていないようです)ので困らないのでしょう*1

それ以外の局を探すなら、下記のようにすると探しやすいと思います。

  • 無線電話に絞る:A1A(電信)より送信時間が長い。モールスを覚えていなくても良い
  • 2MHz帯を探す:2MHz帯が多い気がします
  • 毎時00分, 30分直後に探す:定時放送はきっかりした時間が多く*2、また数分~20分程度なので
  • 予め周波数を入れておいてスキャンする
  • ウォーターフォール画面で探すなら、昼間に探す:4, 6, 8MHzは夜になると探しにくい。

受信に際しては、きりのいい時間に何局か同時に放送が始まったりするので、IQ信号をキャプチャーして後で再生すると便利です。

公開されている資料

定時放送時間

定時放送時間表といえばまずこれが出てきます。一番情報量が多いです。 ただし、内容が古いのか、あまり実態と合っていない気がします(少なくとも三重・函館・宮城県は既に廃局。茨城県・三崎の電信業務(A1A)は終了。それ以外でもあまり時間が合っていない)。

その他、個別に放送時間を開示している海岸局もあります。 (一応、漁業無線を使うにはそこそこのお金を払う必要があると認識しているのですが…定時放送は公共性があるということでしょうか)

海岸局名 リンク
福島県(いわき)無線漁業協同組合 通信時間表 https://drive.google.com/file/d/0B5tF56PZN578Qk9RZldudnEwWDQ/view
茨城県水産試験場 漁業無線局 気象・航行警報等の周知放送時間 https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/suishi/gyogyo/documents/wxtime.pdf
東京都漁業 少し前(合併前)の次の記事から、2MHz(2205kHz, 2520kHz)での放送時間は08:25, 13:00, 15:45, 20:00, 20:30, 01:00とわかります https://www.ifarc.metro.tokyo.lg.jp/archive/22,16654,62.html
一般社団法人神奈川県漁業無線協会(みさき漁業) 放送時間表 https://www.pref.kanagawa.jp/documents/11476/876338.pdf
鹿児島県無線漁業協同組合 通信時間表(無線電信無線電話無線FAX
対馬無線漁業協同組合 放送時間(※2007年のものなのでかなり古いが、おそらく中波帯は変わっていないと思われる)
社団法人沖縄県漁業無線協会 概要 → 協会資料 → (2)通信関連資料 通信時間表中短波, 通信時間表27メガ, 通信時間表電信
一般社団法人 漁業情報サービスセンター 平成31年度 漁海況情報等無線ファクス放送計画表 http://www.jafic.or.jp/service/sea_information/pdf/rfax2019.pdf
海岸局の周波数

下記で確認できます。 意外と局ごとに周波数がかぶらない(多くて3局くらい?)ので、不明な局を受信したら下表からどこか推測は可能です。

一応下記のものもあるのですが、同じか。

その他

私の受信実績

参考までに載せます。受信地は東京です。距離の遠い局(北海道の稚内紋別・網走、山陰の境・JFしまね、九州の対馬)は当地での受信に苦戦しています。

出力 受信実績あり 受信実績なし
200W以上 余市・釧路・根室青森県・釜石・静岡県高知県(室戸)・長崎県・宮崎県(油津)・鹿児島県・大船渡・福島県(いわき)・茨城県・千葉県・石川県(小木)・兵庫県(香住)・徳島県牟岐 小樽水産高校・
100W以上 仙崎・宮津・JFしまね 稚内紋別・網走
50W以上 男鹿・東京都・神奈川県(三崎) 小樽・酒田・南知多(豊浜)・JR九州高速船対馬

他の人の受信例

他に、Twitterで検索すると少しだけ出てきたりします。

電波法第59条

電波法第59条に漁業無線の定時放送が該当するのか、私はよく分かっていません。 ので、公表されていない部分(非公開局の時間や放送の動画等)は書いていません。

(秘密の保護)
第五十九条  何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信(電気通信事業法第四条第一項又は第百六十四条第三項の通信であるものを除く。第百九条並びに第百九条の二第二項及び第三項において同じ。)を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。

読み物

受信に直接役立つわけではないですが、漁業無線に関する知識が深まる文献です。

まず、宮津漁業無線局に関して、業務内容を紹介しているページを挙げます。 小学生向けなのでしょうが、設備や放送内容が簡潔に記載されており、わかりやすいです。 宮津は入り組んでいて山がちであることから、アンテナを2つに分けて、中継しているんですね。

宮津漁業無線局の勤務には日勤(にっきん)と夜勤(やきん)・宿明(しゅくあけ)、2つのスタイルがあり、現在5名の職員が交代して24時間無線局を運用しています。
日勤は昼間の勤務で、朝08時30分から17時15分までの8時間です。
夜勤・宿明は夕方から翌日の朝までの勤務で、17時00分から翌朝08時30分までの14時間です。徹夜で無線局のしごとをしています。

5名で24時間体制を敷くのはかなり大変そうです…。

次に下に挙げているのは、東日本大震災の際に、釜石漁業無線局が非常通信に大いに役立ったとという話です(その他にも、携帯電話などが役立たず、短波帯通信が助けとなった事例はそこそこあるみたいです)。 アマチュア無線についても、災害時の有用性に関する話があるかと思いますが、それに近いです。

下記リンク先の一番上の情報誌は読み応えがあります。

*1:良し悪しはともかく、実は~2MHzだけ1993年版をインターネットで見ることができます:http://stama1.web.infoseek.co.jp/1mhz.htm, [Internet Archive]https://web.archive.org/web/20080924202533/http://stama1.web.infoseek.co.jp:80/1mhz.htm)

*2:予め陸と船とで放送時間を決めないと連絡もままならないからでしょうか