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ニキシー管の特性の測定

今年の電子工作のお題はニキシー管時計かなと思っている。 それで、回路構成やどのような部品を使うか考えようとしたのだが、そもそもニキシー管がどういう素子なのか分からない。 そのため、ニキシー管の特徴を調べ、また2つの特性を測定した。

ニキシー管とは

ニキシー管とは、暖かみのある数字表示ができる、昔のデバイス。それはそう。 では理論的にはどうなのか。

区分

気体放電

次に、ニキシー管が使用しているという気体放電については、まず私は習ったことがなく、教科書等の手持ちもないが、調べたところ以下のサイト・pdfなどにまとまった記載があった。

概要をまとめると以下だと思う。

  • ネオンランプ・ニキシー管ともに比較的安定なグロー放電を使用
  • グロー放電では、陽極・陰極間のうち何箇所かが各々の理由により光るが、そのうちネオン管は陽光柱を使用する一方、ニキシー管陰極グロー(負グロー?)を使用(陰極の周りだけがぼんやり光る)

このような放電管の電圧-電流特性(V-I特性)は、Wikipediaにあるように、大体以下のようになる。

  • 電流あるいは電圧を増加させ、グロー放電開始電圧になると、タウンゼント放電からグロー放電に移行
  • (前期)グロー放電では、電流の増加とともに、電圧は低下する(S形負性抵抗特性)
  • (正規)グロー放電になると、グロー放電開始電圧よりも低い電圧で安定
  • そっから先はまた増加してったりする(興味ないので略)

測定

ここからは測定結果を記す。

測定環境

  • 電源:菊水 "MODEL PAB 250-0.25A" 250Vまで出力できる優れもの。ヤフオクで購入
  • 電圧計(VM1):HIOKI DT4252 大学のロボット競技の講義で、チームが1位になったときの賞品のテスター
  • 電流計(AM1):電源の電流計を使用
  • ニキシー管:ラジオデパート3Fで買ったものだと思う。実は肝心の型番が、印字が消えてしまっていて分からない…。CD-83Pだと思っていたが、LD800*とかかもしれない。
    • 裏に黄色の印字があり、多分NEC製。
    • 高さ25.5mm(除く封入部)、33mm(含む封入部)
    • 管径9.2mm
    • ピン配置はANODEから時計回りにANODE, 0, 9, 8, DP, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1

測定回路

f:id:vita_brevis:20200329181719p:plain
試験回路(図はCircuitLabで作成)

測定1:I-V特性

まず、電源電圧Vcc - ニキシー管の陽極-陰極間電圧Vtubeの特性を示す。
NECニキシー管の特性はだいたい放電開始170V(ニキシ管データ)とかなので、以下の測定値はかなり低い電圧範囲を見ていることになる…。

測定結果

データ番号 Vcc[V] Vtube[V] Icc[mA] 管の状態
1 120.1 120.5 3 消灯
2 124.9 125.3 3 消灯
3 126.2 126.6 3 消灯
4 127.0 124.9 3 点灯
5 130.0 126.5 3 点灯
6 140.2 131.3 4 点灯
7 150.1 136.2 5 点灯
8 160.0 141.3 5 点灯
9 170.2 146.4 6 点灯
10 180.4 151.1 7 点灯
11 190.6 154.6 7 点灯
12 200 155.0 8 点灯
13 179.8 150.4 7 点灯
14 150.9 136.4 4 点灯
15 134.7 128.4 4 点灯
16 127.0 124.7 3 点灯
17 125.1 123.6 3 点灯
18 124.0 123.1 3 点灯
19 123.0 123.0 3 陰極の1部分だけ点灯
20 122.6 123.0 3 消灯
21 110.0 110.4 3 消灯

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Vcc-Vtube測定結果(左:全体。右:140Vまでの拡大)

  • グロー放電開始電圧は約127V(低くね?)
  • 電源電圧は190VあたりからVtubeはほぼ横ばいだが、それまでは電流が増加しVtubeも増加(謎)
  • 確かに開始直後、ニキシー管の陽極-陰極間電圧が低下
  • グロー放電の特性から、放電を開始するとき(青線)と、終了するとき(橙線)では経路が異なり、ヒステリシスが存在

こうさつ

  • 電流の増加に対し電圧も増加しており、思ったのと違う。その理由は良くわからない(標準的な電圧よりかなり低いからだろうか)。
  • そもそも、規格表によれば大体170V-8mAが標準なのだが、そもそもそんなに電圧を掛けなくても良さそう。

測定2 表示しない桁の電圧

ニキシー管は、陽極が共通(アノードコモン)であるため、陰極を接地するかHi-Zにするかで制御することが多い。 その制御には、74141*2という比較的高耐圧の2進-10進デコーダIC*3が使用されることが多い。 しかし、よく考えてみると、点灯している数字については、ニキシー管の陽極-陰極間の電圧降下があるから、そこまでの耐圧が必要とは思えない(Vcc - Vtube - R * Iccがかかる)。

不思議に思って調べていると、どうも表示していない方の桁の陰極に、数十Vの電圧がかかるらしい(ref:http://mkusunoki.net/?tag=74141

確かに、陰極-陽極間に電圧を掛けると、管内に電場が生じるので(なんだか原因と結果が逆な気がする)、使用していない陰極とGND(使用している陰極)間にも電位差が生じそうである。 ということで、使用していない電極にかかる電位を調べた。

結果

  • 電源電圧Vcc = 180.4V, 電流Icc = 7mAで固定
  • 測定回路は上と同じ

この条件で、一番手前の陰極6, 一番奥の陰極0をGNDに落とした場合の、その他の陰極 - GND間電圧は下表の通りであった(ただし、管の手前に近い陰極(6が一番手前)から順に並べた)。

点灯桁 dot 6 7 5 4 8 3 9 2 1 0
0 23.1 43.5 42.9 54.1 65.3 75.5 122.9 136.6 138.4 136.0 -
6 41.0 - 136.7 138.8 138.2 124.1 64.8 62.2 51.3 43.3 39.8

※8と3の間には陽極格子が存在するため、この間の電位には大きな差が生じる。

基本的には、GNDに落とした陰極に近いほど高電位であった。あれ、逆だと思うんだが…。

こうさつ

  • こっちもこっちで想定と逆の結果となった
  • しかし、確かに使用していない(Hi-Zにした)陰極には比較的高い電位にあるようだ。そのため、高耐圧のTrでスイッチングする必要がありそうだ

おまけ

電圧と明るさの関係(スマフォのカメラアプリの明るさ調整が自動で行われるため、あまり参考にならないが…) f:id:vita_brevis:20200329193848j:plain f:id:vita_brevis:20200329193855j:plain f:id:vita_brevis:20200329193858j:plain f:id:vita_brevis:20200329193845j:plain

*1:Wikipediaによれば、「内部は少量のアルゴンあるいはさらに少量の水銀を添加した0.15気圧以下のネオンガス(すなわち、放電電圧を低くするためのペニングガス)で満たされている」

*2:https://eandc.ru/pdf/mikroskhema/k155id1.pdf:多分耐圧60V

*3:74シリーズだと45や145?