屋上に行ったら東京マーチスが受信できた
タイトルの通りです。 電波は周波数が低いほどよく回折するはずですが、やはり見通しの良い場所は強かった。
そろそろどこが悪いかの議論に疲れてきて終止符を打ちたかったので、「①屋上」「②アンテナベランダ、直下で受信」「③アンテナはベランダ、同軸ケーブルで自室受信」の3つを比較しました。以下にバンド・スコープ画面を示しつつ記しておきます。
ただし、この測定結果からは下記の影響は分かりません。
- 同じ位置において、高さだけを変えた時の影響(ベランダと屋上の測定地点は、高さ方向も含めて17mほど離れています)
- アンテナ自体の性能(語弊がある書き方ですが…)
測定環境
なるべく揃えましたが、測定時間だけは揃えられませんでした。
共通部分
- アンテナ:第一電波工業株式会社 D303
- PC:MacBook Pro(受信ソフトはgqrx)
※本来、D303の使用可能周波数は0.5MHz~200MHzです。以下に記す500kHz以下の測定結果は、そもそも範囲外です
個別部分
通番 | アンテナ位置 | 受信位置 | ケーブル | 測定時間 | 地上高 | ロケーション |
---|---|---|---|---|---|---|
① | 屋上 | 直下 | 1m同軸 | 2020/6/8 17:05 - 18:00 | 地上から4階相当の高さ | 北側は開けていてスカイツリーが望めます。南側は木とより高いマンションで遮られています |
② | ベランダ | 直下 | 1m同軸 | 2020/6/14 18:00 - 18:05 | 同上 | 同上 |
③ | ベランダ | 自室 | 10m同軸(RG-58U) | 2020/6/14 16:04 - 16:06 | 地上から2階相当の高さ | アンテナの高さからでも、南側に面していて展望なし |
※どうもSDR Sharpとgqrxではスケール表示の水準がかなり違うようです。比較可能性のため、自室側でもgqrxで受信したものを示しています
※右下のdB表示が場合によりまちまちですが、これは音量で、この数値が変わっても受信レベルには影響がないようです
長波帯
まずは長波帯から、結果を見ていきます。ここでは0Hz~500kHz付近に着目しています。
結果
①屋上
ノイズ・フロアがが劇的に小さく、-110dB程度です。
本来の信号だけが浮かび上がって見えます。この画像の中でも、40kHz JJY, 60kHz JJY, 366kHz 新立川NDB, 389kHz 日光NDB(← New)が分かります。
その他のピークはよくわかりません。ノイズなのか、何なのか。
また、30kHz付近には594kHz NHKラジオ第1のゴーストが出てしまっています。
②アンテナベランダ、直下で受信
ノイズ・フロアが90dB程度まで盛り上がっています。え、こんな違うの?え?
ここだけでも相当の差があり、自室は弱い信号を受信するのに不向きだというのが分かります。考えられる原因は、(i)そもそも屋上はノイズ源が少ない、(ii)ノイズ源との距離も遠い(距離の2乗に反比例して減少する。2乗則を信じろ)ことです。
また、周囲のノイズも拾うようになってしまっています。60kHz~100kHz付近の信号3つの他、その上にもちょくちょくピークが立っていて、これがすべてノイズのようです。
③アンテナベランダ+自室受信
自室になると、同軸ケーブルの拾うノイズの影響が出てきます。スペクトル画面上、ノイズのピークが全体的に増えています。
更に言えば、この測定時はエアコンを切っていますが、エアコンの室外機が丁度~400kHz程度にノイズを程よくバラまいていて、エアコンを付けると目も当てられません。
ケーブルを通す外壁の穴が、室外機横にしか無いため、なかなか回避できません。 窓のサッシに挟むタイプのフラットケーブルで通すなどの対策はありそうです。 ダイヤモンド"MGC50"や、 コメット"CTC-50M"、他Amazonの非ブランド品などがあります。
結論
- アンテナ位置 大いに影響あり
- 同軸ケーブル ノイズを拾ってしまう問題あり
⇒ アンテナを高くすること、ケーブルを変えること、両方で効果が見込めそうです。
中波帯
1665kHz(東京マーチス)について確認しました。
結果
①屋上
明瞭に聞こえます。ようやく放送内容が分かりました。感動。というより、場所を変えるだけでここまで違うとは、笑ってしまいます。自室では
②・③ベランダアンテナ
感度にもノイズフロアにもあまり差がなく、何か言っているのがギリギリわかる程度です(スペクトル上は消えていますが、WindowsマシンでSDR Sharpを使うとわかる)。
10mの同軸ケーブルでは結構ノイズを拾うのではないかと思っていましたが、②と③を比べると、あまりノイズフロアに差がありませんでした。
①と②の比較
この周波数でも、やはりノイズフロアは屋上のほうが20dBほど低いです。 屋上では、信号の強度が-93dBFS程度で、ノイズフロアが-120dBFSほどで、+27dBFSの差があり明瞭に受信できました。 しかし、ベランダでは信号強度は-93dBFSより低く、更にノイズフロアが-100dBFS程度になってしまっているので、これでは上手く受信できなさそうです。
結論
- アンテナ位置 大きく影響(Sの強さ、ノイズフロア双方に影響)
- 同軸ケーブル 特段の問題なし
⇒ アンテナを変える、あるいはアンテナ位置を高く(遠くを見通せることが大事?)しないない限り、ベランダで東京マーチスを受信するのは厳しそうです。
アンテナを手で持ち背伸びするだけでも、スペクトル画面で少しピークが見えるような気がしたので、もう少し高くするだけでも効果がありそうです。
航空無線(VHF)
最後に航空無線(VHF)です。
結果
この領域では、①~③すべてで、信号強度(測定方法に問題があります…後述)もノイズ・フロアもあまり変わりませんでした。
※下図では②は他よりも信号が強いですが、これは飛行機の違いかと考えます。
ただ、119.1MHzは羽田着陸(主周波数)ですが、地上局はまだしも航空機側は強度に毎回ブレがあるようで、あまり比較に適したものではありませんでした。 羽田ATIS(128.8MHz)はエアバンドでは珍しくずっと放送が流れている固定局なので、比較はこちらがよさそうです。
結論
- アンテナ位置 特段の問題なし
- 同軸ケーブル 特段の問題なし
航空無線をよりよく受信しようとするならば、アンテナ自身を良くするより他なさそうです(八木アンテナにするなど)。
まとめ・今後
私の受信環境では、まず何よりも、アンテナ位置が大きく影響することが分かりました。
もう、ベランダで必死に改善することが馬鹿らしくなってきますね。 「より良い装備を揃え、以下に様々な電波を受信できるようになるか」というゲームと考えると、もう屋上にアンテナを、何なら受信機AirSpyとRaspberry Piまでも設置し、無線LAN経由で遠隔操作するようにしたほうが良いのかもしれません。高くしたい…高くしたい…!*1
とりあえずの方向性は下記です:
- ベランダでアンテナをより高い位置にする(今でもベランダの結構高い位置にあり、これ以上伸ばすためにはマストを工面しないといけないため、おいそれとはできなさそう)
- アンテナを屋上に移す(この記事での「屋上」だと、同軸ケーブル引き回しは20mを超え頗る面倒です。が、やはり自室でアンテナ線が欲しくなることはあり、できればケーブルで接続したい。また、母屋の屋上だとしても、TVアンテナを設けていないため、台を用意しステーを貼らないといけません。それはそれで同程度の面倒くささがあります)
次に、長波帯では同軸ケーブルの変更による改善も見込めそうです。方向性としては、今は1重網線シールドのRG-58Uですが、2重シールドの5D-SFAなどに変える事を考えています(そもそも差動伝送にしたほうが良いのでは?)。
また、書いていて長波帯はアンテナの周波数領域の対象外であることを思い出しました。この対応としては、アンテナそのものを変えるということです。マグネチック・ループ・アンテナやMini-Whipなどが性能が良いそうですね。そっか…(気がついたら303WA-2をポチっていた)
その他、USB接続することによるAirSpyの雑音も結構疑っていたのですが、その説も薄くなりました。
*1:強い力