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スペクトラム・アナライザで簡単な回路の周波数特性を見てみる

スペクトラム・アナライザを購入したので、とりあえず簡単な回路の周波数特性を調べてみた。 「進研ゼミで習ったやつだ!」となった。

測定環境

ブレッドボードに素子を差し込んで、以下のように接続した。

  • TG出力+ → 68Ω抵抗*1 - 素子 - RF入力+
  • TG出力- → RF入力-

丁度、以下のサイトのR = 150計算例のようになっている。 https://zawa2.com/ZZsim/doc_sparams2.html

最初、オシロスコープの使い方と同じように、被測定素子の両端を接続しようとしたが、これではRFの入力抵抗の低さが効いてしまうためか、全く上手く測定できなかった。

ケーブルには、「BNC - みの虫クリップのケーブル」、「BNC ⇔ バナナプラグ変換」と「バナナプラグ ⇔ ICクリップのケーブル」を使ったが、特性が悪そうだった。しかし、簡単に測定する他の方法が思いつかず、これらを使った。

CAL THRU

本来すべきなのだが、観測時のパワー・スペクトル - 直結時のパワー・スペクトルが想定とかなり違っており、なんならしない方が想定通りだったので、使っていない。 どうしたものか。

ケーブルの特性

そもそもこれを高周波帯に使おうという意図はないが…。

左から、「両端BNCのケーブル(30cm)」、「BNC - みの虫クリップのケーブル」、「BNC ⇔ バナナプラグ変換」と「バナナプラグ ⇔ ICクリップのケーブル」の組み合わせ。

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使用したケーブルの特性

水晶振動子

被測定素子 = 部品箱にあった14.922MHzの水晶振動子とした。 左の極値が直列共振周波数、右の極値が並列共振周波数だろうか。

ちょうど、下のリンク先のインピーダンスと逆方向の動き(今は素子を通過した電力を見ているので、低いほど通しやすいだろうから、正しいと思う)。 用語説明 | 水晶振動子の回路評価 講座 | 水晶振動子 | 村田製作所

この測定値からは、誤差Δf/fs = 0.05[MHz] / 14.922[MHz] ≒ -0.0335% = 335ppmとなる。ちょっと多きすぎる?

スペアナでマーカーを多用すると思っていなくて、周波数測定の正確さに無関心なまま中古のものを買ってしまったので、こういう時不安*2

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14.922MHzの水晶振動子の測定結果

JJY受信用の同調回路

被測定素子 = JJY受信に使用したLC同調回路。

ただし、同調回路の想定される共振周波数(40kHz)が、スペアナのTGの範囲(300kHz~)外であるため、FG(ファンクション・ジェネレータ)で生成したホワイト・ノイズを入力した。 ホワイト・ノイズだからか、平均を取らないと測定値が大きくバラけてしまった。ただし、VAVG回数を増やすほど測定時間は増えるため、目視でVAVG = 20と決めた。

左から、「Fc(中心周波数) = (共振周波数), SPAN = 25kHz」、「0kHz ~ 100kHz」、「0kHz ~ 1MHz」 。 大体ピークが41kHz前後にあるようだ。

-3dB幅(Q値)は、deltaマーカーで測定できなくはないが、ちょっと面倒そうだったので測っていない。計算する機能がほしい。

あと、ここには写真を乗せていないが、IFTコイルにコンデンサを外付けすることで、40kHzの同調回路は結構簡単に作れそうだった。

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JJY受信用の同調回路

10.7MHz セラミックフィルタ

部品箱の中で、周波数特性を見て楽しそうだったから選んだ(GNDは共通の-に接続)。 実際、「あーそうそう、こういうのが見たかったんだよな」という感じの特性を見れる。

ただし、突っ込みどころが結構あって、

  • 中心周波数は明らかにおかしい(10.7MHzから大幅にずれている。パッと見てここだろ思って拡大したのが下図なので、もしかしたら見落としていた…?そんなことある…?)
  • 帯域幅自体は妥当(横のdivが200kHzなので)
  • 両脇の減衰量が比較的小さい気がする(RBWを下げれば少し良くなると思うが)

インピーダンスの整合を取ったらまともになるだろうか。

それにしても、チップじゃないセラミックフィルタって生産終了が多いんですね…。 電子工作初心者と、それに寄り添う(のか?)秋葉原の部品屋には辛いことなのかな。

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RCの1段LPF

R = 68Ω, C = 390pF。理論的な遮断周波数fc ≒ 6MHz。

実際は、マーカーで-3dB点を調べた限りだと、だいたいfc ≒ 9.58MHz。なんでだ…。

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1段LPFの測定結果

AMラジオ用IFTコイル・OSCコイル

周波数特性が測りやすいものの一つがIFTコイル。共振用のコンデンサがコイル内にあるため、1素子だけで共振回路となる。

IFTコイルはかなり共振ピーク(452.7kHz)が理論値(450kHz or 455kHz。7mm角なので前者かも)に近かった。

OSCコイルは、390pFのコンデンサを並列に入れて測定した。

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IFTコイル・OSCコイル(+390pF)の測定結果

多分だが、コイル単体とコンデンサ単体の特性も測定したようなので貼っておく。

300kHz以下はTGの領域外のため、うまく特性が測れていない。そのためか、コンデンサは、ある周波数以下でfの減少とともにインピーダンスが低下するように見えている。

また、コイルは3.7MHz付近で共振点を持ち、それ以降だとfの増加とともにインピーダンスが低下している(コンデンサ的、容量性)。 これはコイルの自己共振周波数だろうか。

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OSCコイル単体、コンデンサ(390pF)単体、両素子の並列接続時の測定結果

まとめ

  • 被測定回路を接続しない場合(つまりほぼケーブル)の特性を良くしたい
  • 周波数特性が見れて非常に面白い。教科書上の理論の実体験。しかしそれ通りに動かないこともしばしば…理想的な素子と現実に作成できる素子との乖離
  • 共振回路などは製作ミスが減少し、動作しない場合の原因をより早く突き止められるようになりそう

*1:51Ωが直ぐ見つからなかった。今考えると、RF入力側で50Ω終端されているから、この抵抗は不要だ。もし、過大電力からの保護を意図するなら、ATTやRFヒューズを使うべきだった

*2:一応FGでそこそこ正しいことを確かめはしたが