前回の続き。
今回は特性を測る回。前回は以下のような特性を測りたいと言ったが、そのうち周波数応答とTHD+Nについて調べた。
- 周波数応答(関数のパワー)
- 高調波歪み(Total Harmonic Distortion)
- 全高調波歪+ノイズ(Total Harmonic Distortion plus Noise, THD+N)
- 過渡応答
測定環境
PC上で次のソフトウェアを使い測定。フロントパネルのヘッドホン出力・マイク入力を使用。
WaveGene, WaveSpectraの各ソフトの設定方法は、下記に倣った。 このページ中で使用されているスイープsin波のリンク(UserWaveSample1.ZIP)はリンク切れになっている。正しくはWaveGeneのページの一番下にあるのでそれを使う。
また、今回の測定方法の問題点として、WaveSpectraはFFT方式のため、周波数分解能が有限であり、THDやTHD+Nの測定時に、各ピーク値が正確に測定できない点が挙げられる(参考:WaveSpectraを用いた歪率の測定について)。 まあでも面倒なので見なかったことにする。
理論面では、下記のサイトなどが役立つ。
被測定物(アンプ)の音量設定
一般的に、信号が大振幅である(= 音量が大きい)ほど、増幅回路の歪みは大きいと思う。ここでは、回路の音量を最大としたときの最悪値を測定することとした。
具体的には、以下のような手順で音量を設定した。
- WaveGeneで音量を下げておく
- アンプの音量は最大にする
- WaveGeneの音量を少しずつ上げていき、WaveSpectraの波形モニターで、振幅が上(下)限を超えない中で最大の音量とする
測定結果(周波数応答)
想定よりも綺麗な応答だった(結構フラット)。
※ここだけ多分上に書いた音量調節してない。
ちなみに、音量調節をちゃんとしてあげないと、以下のようになってしまった。
測定結果(歪み率)
100Hz, 1kHz, 10kHzの3つの周波数について確認した。
まずヘッドホン出力とマイク入力をケーブルで直結した場合。
次に、被測定回路を通した場合(ここは音量調節をちゃんとしたはず)。
THD+N自体が結構揺動するので、平均(AVG)を取ったほうが良さそうではあるが、面倒なので1回のままとしている。
そのため、参考値でしかないが、上記6パターンの測定結果をまとめると下記のようになる。
THD+N | 100Hz | 1kHz | 10kHz |
---|---|---|---|
THRU | 0.00586% | 0.00709% | 0.00299% |
DUT | 0.01090% | 0.00603% | 0.00679% |
低域(100Hz)、高域(10kHz)では、明らかに被測定回路を通したほうが特性が悪い。 一方1kHzでは、比較的近い値であるが、被測定回路ありの方が特性が良い(そんなことあるか?)。 どちらも、ぱっと理由を思いつけないが…基本的には悪化する方向に進むと思った。
いずれにせよ、この結果は精度が低そうなので、平均を取る、もう少しfについて細かく確認する、あるいは別の測定器で計測することが必要そう。
測定結果(ノイズフロア)
その他、前回挙げてはいないが、無信号時のノイズが気になったので、FFT結果を確認した。
全体的に少しノイズフロアが上昇している。
その他
高調波歪みの解説の式を見ると、和を有限個の(n次の)高調波で打ち切っているものばかりだ。理論上はここは+∞まで取るのが正しいように思う…。
確かに実際は、nが大きくなるほど振幅が小さくなり、ある時ノイズフロア以下となってしまい観測不能になるかもしれない。しかし、その場合は、定義は無限和とした上で、「実際は観測できないためn次までで打ち切る」とコメントを書くべきでは無いだろうかと思った。
後で読む:Simultaneous measurement of impulse response and distortion with a swept-sine technique