動機
Airspy + SDR Sharpだと、中波AM放送帯が観測範囲に入っていると、長波(下側)や中波(上側)に悪影響が出る…ように思っているため。
また、今はf_c = 500kHzのLPFとf_c = 1500kHzのHPFを切り替えて使っているのですが、切り替えが面倒なため1つにまとめたかった。
回路
RF Toolsで色々試行錯誤し下記の回路にしました。 7次のChebyshevフィルタです。
…今フォルダを漁っていたら、その図が消滅してしまっており、悲しいかな当時の設計要件がわからなくなってしまいました。が、概ね下記のようにしたのではないかと思います(今の私ならこうする)。
- 上側:1650kHz(大阪マーチスなど)は通過させつつ、1422kHz(ラジオ日本)は最大限減衰させる
- 下側:518kHz(NAVTEX)は通過させつつ、594kHz(NHKラジオ第1放送)は最大限減衰させる(ただし、少なくとも国内のNAVTEXはかなり強力なので、少し518kHzが弱くなってもいい)
- Zin = Zout = 50Ω
- C・Lの系列:ともにE12
- 通過帯における許容リップル幅:0.1dB。ただし、周波数帯域ほど重要ではない。実際、これはかなり厳しいのか守られていないようです
E12系列の縛りが結構シビアだと思います。実際、E24系列を許容すると、かなり特性が綺麗になります。 Digi-keyに売っているなら次はE24にしようか…。
部品の値からLT-Spiceで再現した特性が下図です。
リップルが目立ちますが、とりあえず中波帯がカットできてはいるようです。
製作
これまた回路はシンプルなのですが、実際に形にしようとするとケースに入れざるを得ず、そこが面倒です。
材料
スチロールコンデンサを使ってみました。ただし、秋月電子にあるスチコンは容量が限定的なので、無いものはフィルム・コンデンサで代用しました。
モノ | メーカー | 型番 | 個数 | 購入先 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
スチロールコンデンサ 0.01μF | FAITHFUL LINK INDUSTRIAL CORP. | PSR103K500RB | 2 | 秋月電子通商 | @税込20円 |
スチロールコンデンサ 2200pF | FAITHFUL LINK INDUSTRIAL CORP. | PSR222J500RB | 3 | 秋月電子通商 | @税込20円 |
フィルムコンデンサ6800pF | ルビコン株式会社 | 50F2D682J | 2 | 秋月電子通商 | @税込10円 |
アキシャルリードコイル 15μH | Core Master Enterprise | AL0510-150K | 3 | 秋月電子通商 | 10本税込100円 |
アキシャルリードコイル 4.7μH | Core Master Enterprise | AL0410-4R7K | 2 | 秋月電子通商 | 10本税込100円 |
アキシャルリードコイル 3.3μH | Core Master Enterprise | AL0307-3R3K | 2 | 秋月電子通商 | 10本税込100円 |
BNCコネクタ(レセプタクル、プラグ) | COSMTEC RESOURCES CO., LTD | B-036 | 1 | 秋月電子通商 | 税込150円 |
BNCコネクタ(レセプタクル、ジャック) | COSMTEC RESOURCES CO., LTD | B-012 | 1 | 秋月電子通商 | 税込170円 |
銅箔テープ | 株式会社寺岡製作所 | No.831S | 少々 | 秋月電子通商 | 1巻(20m)税込650円 |
はんだめっき線 | 理研電線 | HLD-FSS 0.6N 軟質タイプ | 少々 | 秋月電子通商 | 100g巻税込900円 |
アルミ・ダイキャストケース | タカチ | TD4-6-3N | 1 | エスエス無線(ラジオ・デパート) | メーカー希望700円 |
ねじ(ナベ, M3×8~10) | 大阪魂シリーズ | - | 8 | monotaRO | 50個税抜399円 |
圧着端子(M3) | ニチフ | R2-3 | 4 | monotaRO | 20個税抜119円 |
スプリングワッシャー(M3) | 大阪魂シリーズ | - | 8 | monotaRO | 100個税抜299円 |
ワッシャー(M3) | 大阪魂シリーズ | - | 4 | monotaRO | 100個税抜399円 |
ナット(M3、並目、3種) | 大阪魂シリーズ | - | 8 | monotaRO | 95個税抜419円 |
アルミ・ダイキャストケースの加工に関しては前の記事に書いています。 ちなみに、RS Componentsから、BNCのオス・メスコネクタが既にくっついているアルミダイキャストケースが販売されています。 ただし、4,000円ほどするので、私は諦めて普通のアルミダイキャストケースに穴あけ加工をしています。
例)RS PRO 試験箱 BNC(メス) - (オス) https://jp.rs-online.com/web/p/test-boxes/1890258/
実装
今回、フィルタの実装に、「LCフィルタの設計&製作」(CQ出版社)に書かれている片面銅箔基板(いわゆる生基板)を使った方法を試してみました。
具体的には、銅箔基板の裏面に銅箔テープを貼ってパターンを形成し、そこに部品をはんだ付けしていきました。 銅箔面はベタアースとして機能させます。 銅箔面と裏面とは、5箇所に穴をドリルで開け、スズメッキ線を渡すことで、ビアの代わりとしています。
実際やってみると、銅箔テープと銅箔面とで少しでも段差があってしまうとハンダがなかなかつながらず、思ったより大変でした。
また、銅箔テープの粘着力はそこまで強くないので、部品をはんだ付けした後部品につられて持ち上がってしまうなどの事象が見られました。 特に、信号線~GND間のLC直列回路の中間部分が細くなってしまい、剥離しやすくなってしまいました。
完成図
測定
とりあえず中波帯は減衰できています。 ただ、その近傍周波数で想定より落ち込んでしまっています(あまり急峻にできていない)。
まあ、あまり良くはないのですが、LPFないしHPFの代わりにAirspyに付けて使うには実用的みたいです(今はこちらを使っています)。
スペアナに、複数マーカー機能やPCへのデータ出力機能、あと対数周波数軸表示機能が欲しくなりました。
感想
結局、LPFとHPFをリレーで切り替えた方がマシなのではという気持ちになりました(Perseus方式)。 チップ部品にした上で、そういう基板を作ることにします。
あと、群遅延特性はそこまで必要ではない(広帯域の信号は扱わない)と思っているので、楕円フィルタの導入も視野です。